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江戸時代の鼠ガイドブックを解説

平成23年1月、Experimental Animals 誌において、江戸時代の鼠ガイドブック『養鼠玉のかけはし』に関する総説を発表しました。
Yoso-Tama-No-Kakehashi; The first Japanese guidebook on raising rats. Exp Anim. 2011;60(1):1-6. Review.
江戸時代の明和年間(1764〜71年)、「鼠」をペットとして飼育することが大坂で流行しました。 珍しい毛色や模様をもつ鼠は人気があったのでしょう。そのような「鼠」を紹介し、飼育法を教えるガイド本が発行されました。 そのなかに、安永4年(1775年)発行の『養鼠玉のかけはし(ようそたまのかけはし)」と、 天明7年(1787年)発行の『珍翫鼠育草(ちんがんそだてぐさ)』があります。
本総説では、「鼠」という動物が、現代われわれが呼んでいる「はつかねずみ(マウス)」なのか「どぶねずみ(ラット)」なのかを明らかにすることを試みました。 幸い、国立国会図書館の電子アーカイブ『描かれた動物・植物 江戸時代の博物誌』に、 『養鼠玉のかけはし』の全画像が掲載されていました。 そこで、全文を現代語訳し、その内容を検討しました。
『養鼠玉のかけはし』は、上巻34ページ、下巻14ページからなる小冊子です。 作者は春帆堂亭主とありますが、実名は不明です。 内容は、鼠の紹介、変種の紹介、そして、飼育方法からなります。
『養鼠玉のかけはし』表紙 鼠品売買所の軒先「芸は身を助かる鼠や其甲斐に、猫にも捕られず箱に入れられ」という狂歌が添えられている。
以下の点が明らかとなりました。
1,漢語の「鼠」は、和語の「ねずみ」を指す。
2,「ねずみ」は家に棲み着く、小型でウサギのような体型をした毛のない長い尾をもつ。
3,口ひげは長く、眼は丸く飛び出ている。
4,「ねずみ」とは別に、「のらこ」という動物もいる。
5,この「のらこ」は俗名を「はつかねずみ」という。”はつか”とは”わずか”という意味である。
現代でも、我々は「はつかねずみ」という言葉を用いて、「マウス」を示します。 そこで、「鼠」は「どぶねずみ=ラット」であり、「のらこ」は「はつかねずみ=マウス」であると、考えました。 従って、『養鼠玉のかけはし』は、当時の愛玩用ラットを対象にした刊本であると考えています。
  
ラットとマウスの呼び名の整理
漢名和名種名和名(現在)
ねずみラットドブネズミ
[鼠句][鼠青]のらこ
(俗名:はつかねずみ)
マウスハツカネズミ


初版:2011年02月22日
最終更新:2013年07月11日