NBRP Rat No: 0270 |
系統名: THE/Utp |
通称: THE, Tsukuba high-emotional rat |
Rat Genome Database |
研究責任者: |
加藤克紀 筑波大学 〒305-8577 茨城県 つくば市天王台1-1-1 日本 |
Tel: 029-853-4881/6093 Fax: 029-853-4881/6093 |
Email: kkato@human.tsukuba.ac.jp |
保存状況: |
胚 精子 生体 |
|
|
毛色 |
albino (c) |
近交世代数 |
F84+13 (May 2008) |
利用条件 |
利用者は、研究成果の公表にあたって寄託者の指定する文献を引用する。 Fujita, O., Annen, Y., and Kitaoka, A. (1994) Tsukuba high- and low-emotional strains of rats (Rattus norvegicus): an overview. Behavior Genetics, 24, 389-415. |
分類 |
|
コマーシャルブリーダー |
|
|
研究分野 |
|
遺伝子 |
|
由来 |
筑波大学心理学系の藤田統により、ランウェイ・テストでの移動活動量に基づいて、Wistar雑系ラットより双方向に選択交配された近交系である。移動活動量の低さに基づいて交配された方がTHE (Tsukuba High Emotional)、移動活動量の高さに基づいて選択交配された方がTLE (Tsukuba Low Emotional)である。 |
特性など |
THEとTLEの行動特性は、50を超える様々な場面において比較されてきたが、THEは情動反応を示しやすく、TLEは情動反応を示しにくいという点でほぼ一貫している。様々な新奇場面において、THEは一貫して脱糞やすくみを頻発させるが、TLEはこれらの反応を示さずに環境を活発に探索する。ストレス刺激を与えられたときの発声を比較しても、THEで発声が多く、TLEでは少ない。
よく慣れた場面における行動特性を挙げると、THEは、半自然場面において早い時期に穴を掘りはじめて地下にもぐり、地表にあまり出て来ない。地表に出て来ても物音がするとすぐ巣穴に逃げ込む。生活空間に新奇物や危険物を入れられると、それに砂やオガクズをかけて埋めてしまう。テリトリーに同種他個体が侵入してきても、なかなか攻撃を示さない。集団で飼育すると劣位になった個体が攻撃を完全に抑制するため、集団内にはっきりとした順位関係ができる、などの特徴がある。
TLEはちょうどこの反対で、なかなか巣穴を堀りはじめず、巣穴を作った後も、地表によく出て来る。地表に居るときに実験者が物音を立てても、めったに巣穴には逃げ込まない。テリトリーに同種他個体が侵入してくると、非常に激しく攻撃する。集団で飼育した場合、劣位な個体が攻撃を抑制しないため、集団内の順位関係ははっきりしない、などの特徴がある。両系のこのような行動特性は、養母交換や幼児期ハンドリングなどの環境操作を行っても、ほとんど影響を受けないことが報告されている。
藤田らは、THEは、種々の情動事態において閉鎖的・受動的に環境に対処し、内向的な行動様式をとる系統、TLEは、環境に積極的・外向的に対処する系統であると要約している。 |
繁殖・維持方法 |
兄妹交配で維持する。35世代までは毎世代,36世代以降50世代までは5世代ごとにランウェイテストによる選択を行ってきたが、現在は兄妹交配のみで維持している。TLEで子食いが多く、THEに比べて繁殖が難しい傾向がある。 |
遺伝診断法 |
|
参考文献 |
阿部勲・藤田統・中村則雄 1977 高・低情動反応性系ラットの行動比較 -Home-cage Activity- 東京教育大学教育学部紀要, 23, 61-66.
安念保昌 1986 情動性に関して選択交配されたラットにおける侵入者攻撃と順位行動 ―情動性と社会的体制化― 心理学研究, 57, 273-280.
安念保昌 1988 攻撃行動の遺伝 遺伝, 42, 27-32.
安念保昌 1989 情動性に関して選択交配されたラットにおける社会行動の系列構造と発達的変化 心理学研究, 59, 326-333.
Annen, Y. & Fujita, O. 1984 Intermale aggression in rats selected for emotional reactivity and their reciprocal F1 and F2 hybrids. Aggressive Behavior, 10, 11-19.
Annen, Y. & Fujita, O. 1985 Relationship between emotionality of intruders and aggressive behavior of residents in rats. Japanese Psychological Research, 27, 119-124.
Annen, Y. & Fujita, O. 1985 Septal lesions and biting attacks in rats bidirectionally selected for emotionality. Behavioral and Neural Biology, 43, 132-142.
安念保昌・中津山英子・和田由美子・藤田統 1992 Tsukuba情動系20年間の家系図 筑波大学心理学研究, 14, 1-13.
Fujii, M., Asada, M., Takata, N., Yamano, A. & Imada, H. 1989 Measurement of emotional reactivity and association ability of the Tsukuba emotional strains of rats (Rattus norvegicus) in licking and lever-pressing conditioned suppression situations. Journal of Comparative Psychology, 103, 100-108.
藤田統 1988 Tsukuba 情動系ラットのランウェイ・テストにおける遺伝とシェルター付きオープン・フィールドにおける行動の分析 筑波大学心理学研究, 10, 53-67.
藤田統 1989 Tsukuba情動系ラットの味覚嫌悪学習 - 高・低情動反応性系ラットの行動比較(51) 筑波大学心理学研究, 11, 23-34.
Fujita, O., Annen, Y., & Kitaoka, A. 1994 Tsukuba high- and low-emotional strains of rats (Rattus norvegicu): an overview. Behavior Genetics, 24, 389-415.
藤田統・鎌塚正雄 1982 ラットにおける食物獲得競争テストの検討 -交.低情動反応性系ラットの行動比較(7) 筑波大学心理学研究, 4, 1-6.
藤田統・片山尊文 1981 高・低情動反応性系ラットの行動比較:5 -能動的回避学習 と受動的回避学習- 筑波大学心理学研究, 3, 1-6.
藤田統・加藤宏・安念保昌・増井誠一郎・北岡明佳・中津山英子 1990 Tsukuba情動系ラットの野外フィールドにおける4年間の個体 数の推移とそれに関連する雄の性行動 筑波大学心理学研究, 12, 37-45
藤田統・中村則雄・宮本邦雄・片山尊文・鎌塚正雄・加藤宏 1980 選択交配により作られた高・低情動反応性系ラットの行動比較 筑波大学心理学研究, 2, 19-31.
Imada, H. 1972 Emotional reactivity and conditionability in four strains of rats. Journal of Comparative and Physiological Psychology, 79, 474-480.
Iso, H., Brush, F.R., Fujii, M., & Imada, H. 1988 Running-wheel avoidance learning in rats (Rattus norvegicus): effects of contingencies and comparisons of different strains. Journal of Comparative Psychology, 102, 350-371.
加藤宏 1987 ランウェイ・テストを指標としたラットの情動反応性の選択交配:3 -生物学的適応- 筑波大学心理学研究, 9, 57-65.
加藤克紀・牧野順四郎 2001 活動性を規定する情動因子 体育の科学, 51, 688-693.
北岡明佳・藤田統 1991 ランウェイ・テストの構造とTsukuba情動系ラットの行動 筑波大学心理学研究, 13, 67-71.
Kitaoka, A. 1991 Emergence from home cage in rats(Rattus norvegicus) as a function of strain and sex. Japanese Journal of Animal Psychology, 41, 28-33.
Kitaoka, A. & Fujita, 0. 1991 Behavioral comparisons of the Tsukuba Emotional strains of rats (Rattus norvegicus) in three types of novel situations. Behavior Genetics, 21, 317-325.
Kitaoka, A. 1994 Defensive aspects of burrowing behavior in rats (Rattus norvegicus) : A descriptive and correlational study. Behavioural Processes, 31, 13-28.
Nageishi,Y. & Imada, H. 1974 Suppression of licking behavior in rats as a function of predictability of shock and probability of conditioned-stimulus-shock pairings. Journal of Comparative and Physiological Psychology, 87, 1165-1173.
Naito, H., Inoue, M., & Makino, J. 2000 Ultrasonic isolation calls in genetically high- and low-emotional rat pups. Experimental Animals, 49, 289-294.
Naito, H., Inoue, M., Suzuki, Y., Tohei, A., Watanabe, G., Taya, K. & Makino, J. 2001 Ultrasonic vocalization responses in genetically high- and low-emotional rats. Experimental Animals, 50, 285-291.
中村則雄 1981 ランウェイ・テストを指標としたラットの情動反応性の選択交配:2 -選択基準とその他の測度との関係- 筑波大学心理学研究, 3, 33-38.
中村則雄・阿部勲・藤田統 1978 高・低情動反応性系ラットの行動比較:2 -
オープンフィールド行動と貯蔵行動 心理学研究, 49, 61-69.
中村則雄・藤田統 1979 高・低情動反応性系ラットの行動比較:3 -VocalizationとDefecation- 筑波大学心理学研究, 1, 11-16.
中村則雄・藤田統 1980 高・低情動反応性系ラットの行動比較:4 -初期経験の効果(その1)高架式直線走路と水中直線遊泳路- 筑波大学心理学研究, 2, 13-18.
中村則雄・藤田統・加藤宏・鎌塚正雄 1982 高・低情動反応性系ラットの行動比較:6 -F1を加えた分析(その1)飲水行動- 筑波大学心理学研究, 4, 33-39.
中津山英子・牧野順四郎 1998 第65世代Tsukuba情動系ラットのランウェイテストにおける移動活動 筑波大学心理学研究, 20, 23-29.
小貫泰広・加藤克紀・牧野順四郎・中津山英子 2003 Tsukuba情動系ラットにおける餌運搬行動 動物心理学研究, 53, 71-77.
Wada,Y. & Makino, J. 1997 Defensive burying in two strains of rats selected for emotional reactivity. Behavioural Processes, 41, 281-289.
和田由美子・牧野順四郎 1999 情動反応性によって選択交配されたラットの行動薬理 脳の科学, 21, 1103-1107.
和田由美子・中津山英子・細川裕士 1999 Tsukuba 高・低情動系ラットの妊娠率と仔食い率 筑波大学心理学研究, 21, 67-71.
|
系統情報 |
THE TLE |
|
|