系統情報
 NBRP Rat No:   系統名: MPR/Iar  通称: MPR-Arsbabd/Iar, MPR Rat Genome Database
研究責任者:  国枝哲夫         岡山大学自然科学研究科        〒700-8530   岡山 岡山市津島中3-1-1       日本
Tel: 086-251-8314     Fax: 086-251-8388 Email: tkunieda@cc.okayama-u.ac.jp
保存状況:   胚            精子           生体
毛色  albino (c)
近交世代数  F?
利用条件  利用者は、事前に寄託者の提供承諾書を得ること。利用者は、共同研究として本リソースを用いた成果公表の最初の論文に寄託者を共著者とすること。
分類
 Inbred  Segregating  Congenic  Consomic  Recombinant
 Coisogenic  Spont. Mutant  Transgene  Ind. Mutant  その他 
コマーシャルブリーダー
研究分野
 糖尿病・肥満  脳神経疾患  眼疾患  歯科疾患  循環器系疾患・高血圧
 がん・腫瘍  代謝、内分泌  耳鼻疾患  免疫・アレルギー疾患  感染症
 骨形態異常  消化器疾患  皮膚疾患  生殖器疾患  発生
 行動・学習  血液疾患  泌尿器疾患  薬理学  その他  
 対照動物  レポーター遺伝子動物
遺伝子 Arsb: arylsulfatase B
由来 1988年(財)動物繁殖研究所においてIS 系ラットコロニー中に体型の小型化、頭部および鼻梁の短小化等の外観的特徴を持つラットとして発見された単一劣性ミュータント(Yoshida, 1993)。Wistar Imamichiと交配後、近交系化されている。
特性など MPR ラットは体型の小型化、手足の短小化、特徴的な顔面の変型等全身の骨形成不全を呈し、病理学的にも組織の空胞化とグリコサミノグルカンの蓄積、尿中へのデルマタン硫酸の排泄等、ヒトのムコ多糖症VI型ときわめて類似した表現型・病態を示す(Yoshida, 1993)。ホモ個体は出生時には正常個体と区別がつかないが、約3週齢より体型の小型化、頭部および鼻梁の短小化等の形態的異常が出現する。成体では体長、尾長、頭蓋骨の長さのいずれも正常個体より短小であるが、頭蓋骨の幅は正常個体より大きい。 組織学的解析により、神経系を除く全身の各臓器の間葉系、すなわち線維芽細胞、軟骨細胞および単球、食細胞系の細胞に空胞化が観察された。また、ヒトにおいては報告されていない角膜の上皮、大動脈内皮においても空胞が認められている。以上の病理所見より、本疾患がムコ多糖症である可能性が疑われたので、尿中のムコ多糖を調べたところ、デルマタン硫酸が排出されていることが明らかとされた。さらに,肝組織中の各種のグリコサミノグリカン分解酵素活性を測定により、アリルスルファターゼBの活性が顕著に低下していることも明らかとされた。 本表現型は常染色体劣性の遺伝子(abd)による。abdの正体は第2染色体上に存在するアリルスルファターゼB 遺伝子(Arsb)であることが判明した(Kunieda, 1995)。ArsbのcDNA上の507 番目の位置への1塩基の挿入があり(507insC)、この挿入によるフレームシフトで258 番目の終止コドンでアミノ酸翻訳が停止し、アリルスルファターゼB蛋白のカルボキシル末端の約半分を欠失する。機能欠損(loss of function)突然変異であり、遺伝性は劣性である。なお、この1塩基の挿入は,Cが7回繰り返した配列における1塩基過剰のCの挿入であることから、単純反復配列での塩基挿入あるいは欠失と同様なメカニズム、すなわちDNA 複製時の「スリップ」による二本鎖の誤対合に起因するものと考えられる。 MPR ラットは、ヒトのムコ多糖症VI型にきわめて類似した表現型・病態を示す。さらにヒトのムコ多糖症VI型と同様に、MPRラットのArsb内での突然変異が証明されたことより MPR ラットはヒトのムコ多糖症VI型の真性のモデルであるといえる。MPR ラットの病態は臓器により差はあるものの、骨髄移植により改善されることが示されている。今後アリルスルファターゼB酵素補充療法、アリルスルファターゼB酵素生産細胞補充療法遺伝子治療法を含めたヒトのムコ多糖症VI 型治療法の確立のための良いモデルとなることが期待されている。
繁殖・維持方法 変異遺伝子Arsbがホモの場合、雌雄ともに繁殖は極端に困難である。 Arsbをヘテロにしたsegregating inbred strainとして維持する。
遺伝診断法 遺伝診断プロトコール Arsb
参考文献 Yoshida M, Noguchi J, Ikadai H, Takahashi M, Nagase S.
Arylsulfatase B-deficient mucopolysaccharidosis in rats.
J Clin Invest. 91(3):1099-104, 1993.

Kunieda T, Simonaro CM, Yoshida M, Ikadai H, Levan G, Desnick RJ, Schuchman EH.
Mucopolysaccharidosis type VI in rats: isolation of cDNAs encoding arylsulfatase B, chromosomal localization of the gene, and identification of the mutation.
Genomics. 10;29(3):582-7, 1995.
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