系統
系統:  F344/N-rnu (nude rat) 
キーワード:  T細胞欠損症、無毛、免疫不全 
由来:  1953年スコットランド Rowett Research Institute の非近交系フーデッド・コロニー中に見出された。このコロニーはコンベンショナル環境下で維持されていたために15~16代で一時途絶えたが、1975年に再出現した。後者のミュータント系統をもとにして1977年にはMRC実験動物センターにおいて繁殖用コロニーが確立された。1979年実験動物中央研究所において繁殖用コロニーが作成され、これに由来する亜系統が京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設で維持されている。 
表現型・病態:  胸腺依存の免疫不全(T細胞機能欠損)と無毛を主な特徴としている。胸腺は痕跡程度にしか認められず、出生児には未分化な細胞からなる小嚢胞または小腺管からなっており、リンパ球は存在しない。またリンパ節、脾、パイエル板のT細胞依存領域のリンパ球は脱落している。免疫学的にもT細胞はその機能がほぼ完全に欠損しており、T細胞依存性のマイト-ジェンである ConA, PHA 等に対する反応やT細胞依存性抗原に対する抗体(IgM, IgG)産生は認められない。移植免疫も欠如しており、皮膚の異種移植あるいはヒトやマウスの腫瘍移植も成功している。体毛については正常個体に比して著しく少なく、全身被毛から部分脱毛、そしてほぼ完全な脱毛といったヘアサイクルが観察される。 
病因(原因遺伝子):  (ACI×F344/N-rnu/rnu)F1×F344/N-rnu/rnu バッククロス個体を用いた連鎖解析により、ラットヌード遺伝子座(rnu)は第10染色体上q24-q32領域にマップされた。  ヌードラットの原因遺伝子は、ヌードマウスの原因遺伝子である HNF-3/forkhead homolog 11(Hfh11)遺伝子と同一である。ハノーファーの実験動物研究所由来のHan:NZNU-rnuN ラットでは、Hfh11遺伝子のエクソン4 以降に二種類の配列Xもしくは、Y(エクソン4 に続くイントロンの最初の200bp)が連結した不完全な転写産物がそれぞれ認められる。X,Yともに内在性レトロウイルスに類似した配列であることが明らかとなり、エクソン4と5の間に内在性レトロウイルス様配列が挿入されたことが示唆されている。現在、ラットのヌード遺伝子は、ヒトに統一され、Whn (winged-helix nude) が、マウスのヌード遺伝子は、Foxn1(forkhead box N1)が使われている。  
臨床への応用、有用性:  免疫学、感染学、腫瘍学
 
維持機関:  (財)実験動物中央研究所 日本クレア株式会社 (1999年6月1日現在) 京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設 (2002年12月現在) 
文献:  Jones, B. and Jesson, M. I. On the nature of the mutation in the nude rat [letter]. Trends Genet. 11: 257-258, 1995. Kuramoto, T., Serikawa, T., Hayasaka, N., Mori, M., Yamada, J. Regional mapping of the Rowett nude gene (RONU) to rat chromosome 10q24- ->q32 by localizing linked SYB2 and GH loci. Cytogenet Cell Genet. 63: 107-110, 1993. Nehls, M., Pfeifer, D., Schorpp, M., Hedrich, H., Boehm, T. New member of the winged-helix protein family disrupted in mouse and rat nude mutations. Nature. 372: 103-107, 1994. Segre, J. A., Nemhauser, J. L., Taylor, B. A., Nadeau, J. H., Lander, E. S. Positional cloning of the nude locus: genetic, physical, and transcription maps of the region and mutations in the mouse and rat. Genomics. 28: 549-559, 1995.  
執筆者記録:  庫本高志(京都大学)1999年6月1日, TS:4/22/03 
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