系統
系統:  IS (Ishibashi rat) 
キーワード:  脊椎形成不全症、先天性後側彎症、カルシウム代謝 
由来:  ISラットは、1975年麻布獣医科大学(現麻布大学)で、野生 雄ドブネズミとWistar系雌ラットから得た交雑仔を近交系化している途上に見出され た、腰椎を主部位とする椎骨の異常(完全または不完全癒合、楔状椎、蝶形椎、また それらの結果として生ずる側彎および後彎症)を特徴・ニしているミュータントであ る。1978年京都大学医学部附属動物実験施設へ分与され、亜系統が作出されている。  
表現型・病態:  脊椎の異常は、重度の後側彎症を呈するものから軽度の不完 全癒合が認められるものまで、様々であるが、雌雄ともほぼ全例に異常が認められる 。第11胸椎から第1仙椎の間の1~8個の脊椎が形成不全を起こし、成熟に伴って、完 全または不完全癒合、部分欠損、披裂、蝶形椎、一側性分離不全などの症状が単独ま たは合併して認められる。椎体の変形、縮小、癒合などから後彎を起こす例が多く、 また椎体の一側性の分離不全による側彎も多く見られるが、一般的にはこの両者が同 時に認められ、後側彎症となる。異常は腰椎、特に第3・第4腰椎に集中しており、多 ・ュの場合生後10~15日頃、腰椎の異常隆起が触知され、重度の場合は、腰背部の明 瞭な隆起が一見してわかるほどである。他にISは、低アルカリフォスファターゼ血症 、皮膚の異常、正常市販飼料で自然発症う歯(むし歯)を下顎臼歯に高発するなどの 多様な特徴を持っている。これらはいずれもカルシウム代謝に関係するものと考えら れている。 
病因(原因遺伝子):  椎骨の異常は、交配試験から、少なくとも独立した2個の劣 性遺伝子が関与する形質と考えられている。また、椎骨異常と低アルカリフォスファ ターゼ血症は、異なる遺伝子によって支配されていることが明らかにされている。 
臨床への応用、有用性:  各種の先天性脊椎疾患の発生機序や治療法の研究、特に後側 彎症、脊髄正中離開、二分脊椎などの難治疾患や特発性側彎症などの成因解明、治療 法開発のための研究に有用である。 
維持機関:  麻布大学獣医学部 (1999年8月1日現在) 
文献:  Ishibashi, M. Congenital vertebral malformation (Ishibashi rats). In Handbook on Animal Models of Human Diseases, pp. 430-434, Kawamata, J. and Matushita, H. (edit.), Ishiyaku Shuppan Ltd., Tokyo. Maekawa, R., Yamada, J., and Nikaido, H. Genetical studies of low plasma alkaline phosphatase (ALP) activity in the IS strain of rats. Exp. Anim., 31: 13-19, 1982. Yamada, J., Nikaido, H., Moritake, S., and Maekawa, R. Genetic analyses of the vertebral anomalies of the IS strain of rat and the development of a BN congenic line with the anomalies. Lab. Anim., 16: 40-47, 1982. Moritake, S., Yamamuro, T., Yamada, J., and Watanabe, H. Progression of congenital kyphosis in Ishibashi rats. Acta Orthop. Scand., 54: 841-846, 1983. 
執筆者記録:  近藤 靖(田辺製薬株式会社)1999年8月1日, TS:4/22/03 
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