系統
系統:  KZC (Komeda Zucker creeping rat) 
キーワード:  歩行異常、小脳低形成、脳の細胞構築異常、creeping (cre) 遺伝子、reelin遺伝子 
由来:  東京医科大学動物実験センターのKomedaらにより、クローズドコロニーで維持されていた Zucker fatty rat の中に歩行異常の個体として発見され、系統として確立された。 
表現型・病態:  11日齢以降、歩行中のよろめきとして初めて異常が認められ、四肢の協調性の欠如、横転、軽度の振戦などが顕在化する。3週齢にてはいずるようになり、次第に衰弱して全ての個体が35日齢以内に死亡する。  小脳の低形成が特徴的であり、分子層および顆粒層は非常に薄く、明瞭な層構造が認められない。プルキンエ細胞の配置が異常であり、大部分が白質内に存在する。小脳以外の脳組織にも異常が認められる。大脳皮質全体に渡って分子層が認められず、また層構造も明瞭でない。特に、海馬における細胞配置異常が顕著である。 胎生期E16 において、大脳皮質の細胞配列が不規則かつ密度が低いため正常個体と識別できる。加齢に伴う脳の層構造構築上の変化は認められない。 これらの表現型はマウスのreeler変異と類似する。 
病因(原因遺伝子):  第4染色体上のcreeping (cre) 遺伝子座によって規定される常染色体劣性遺伝様式をとる。cre遺伝子座領域におけるラット・マウス間の比較遺伝子マッピングの結果から、cre遺伝子の候補としてreelerマウスの原因遺伝子であるreelin (Reln) が示唆されている。実際、cre/cre 個体の2週齢全脳において Reln 遺伝子の発現量が顕著に低下している。2003年、ポジショナル候補遺伝子アプローチによって、cre遺伝子の本体がReln遺伝子におけるフレームシフト変異であることが同定された。これはラットReln遺伝子座において変異が確認された初めての例である。 
臨床への応用、有用性:  通常の飼育方法では35日齢以内に死亡するが、飼育方法を改良すると長期間延命させることが可能であり、成熟個体を研究に資することができる。Reln遺伝子異常のラットとして、Relnの機能を解明する研究に寄与することが期待される。 
維持機関:  東京医科大学動物実験センター (2001年5月25日現在) 
文献:  Ishibashi, K., Komeda, K., Sekiguchi, F., Kanazawa, Y. Creeping: A new mutant rat with neurological disease. Lab. Anim. Sci. 39:132-136,1989. Yokoi, N., Shimizu, S., Ishibashi, K., Kitada, K., Iwama, H., Namae, M., Sugawara, M., Serikawa, T. and Komeda, K.: Genetic mapping of the rat mutation creeping and evaluation of its positional candidate gene reelin. Mamm. Genome 11(2):111-114, 2000. Yokoi, N., Namae, M., Wang, H.-Y., Kojima, K., Fuse, M., Yasuda, K., Serikawa, T., Seino, S. and Komeda, K.: A rat neurological disease creeping is caused by a mutation in the reelin gene. Mol. Brain Res. (in press).  
執筆者記録:  横井伯英(千葉大学)2001年5月25日, TS:4/22/03 
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