系統
系統:  LETL (Long-Evans Tokushima lean rat) 
キーワード:  1型糖尿病、膵島炎、MHC(RT1 u ハプロタイプ) 
由来:  大塚製薬徳島研究所の Kawano らによって、チャールズ・リバー・カナダ社から購入したクローズドコロニーの Long-Evansラットから1型糖尿病を発症する系統として確立された。 
表現型・病態:  8週齢以降、性差なく糖尿病を発症し、発症率は約30%である。糖尿病を発症すると、多飲、多食となり、ケトン尿や急激な体重減少等がみられ、インスリン治療なしでは2週間以内に多くの個体が死亡する。糖尿発症個体では、顕著な血糖値の上昇と血漿インスリン値の低下がみられる。  膵島炎は糖尿病発症前より認められ、糖尿病を発症するとリンパ球の浸潤像は徐々に消失し、膵ランゲルハンス島の萎縮、数の現象がみられる。浸潤リンパ球の多くはIa陽性のTリンパ球であること、さらに、浸潤リンパ球は膵β細胞を特異的に障害し糖尿病を発症した個体でもA細胞やD細胞は比較的残存していることが報告されている。リンパ球浸潤は膵臓以外にも顎下腺と涙腺に認められる。その他に、LETLラットの膵ランゲルハンス島には、血管透過性の亢進に起因すると考えられるヘモジデリン沈着が、また腎尿細管にはグリコーゲンネフローシスが認められる。  
病因(原因遺伝子):  LETLラットの膵島炎の発現には2個以上の劣性遺伝子座が関与し、その一つがMHCのRT1 uハプロタイプと強く連鎖していることが示唆されている。 
臨床への応用、有用性:  LETLラットの問題点の一つに糖尿病発症率の低さがあげられる。LETLラットを研究に使用していく場合、糖尿病発症率を上げることが不可欠であると考えられる。
LETLラットは膵島炎の発現にMHCが関与している点については、1型糖尿病のモデル動物として頻用されているNODマウスやBBラットと共通している。一方、糖尿病の発症に性差がないこと、Tリンパ球の減少がないこと等、これらのモデル動物と異なった特徴を有しており、ヒト1型糖尿病の解明に寄与するものと期待される。 
維持機関:  大塚製薬徳島研究所 (2001年5月25日現在) 
文献:  Kawano, K., Hirashima, T., Mori, S., et al A new rat strain with insulin dependent diabetes mellitus, “LETL”. Rat News Lett. 22:14, 1989. Kawano, K., Hirashima, T., Mori, S., et al New inbred strain of Long-Evans Tokushima Lean rats with IDDM without lymphopenia. Diabetes 40:1375-1381, 1991. Noma, Y., Mizuno, A., Sano, T., Iwami, T., Shi, K., Shima, K. Correlation between residual β-cell function and age at onset of spontaneous diabetes in Long Evans Tokushima Lean rats. Metabolism 41:1379-1385, 1992. Mizuno, A., Iwami, T., Sato, T., et al Cyclophosphamide-induced diabetes in Long-Evans Tokushima Lean rats: influence of ovariectomy on the development of diabetes. Metabolism 42:865-869, 1993.  
執筆者記録:  横井伯英(千葉大学)2002年12月, TS:4/24/03 
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