系統
系統:  VF (Vacuole formation rat) 
キーワード:  振戦、脳の空胞形成 
由来:  VF (Vacuole Formation)ラットは、1992年3月、京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設で 維持していた tremor (TRM) rat のF26世代目に、TRMのミュータント遺伝子ホモ (tm/tm)個体とは異なり、被毛および触毛が正常型であるにも関わらず振戦を示す個体として発見された。当初は、発見者 の冗談ではないかということで、「オオカミ少年」の童話からWOLF Ratと名付けられていた。tm 遺伝子を除いた後、近交系として確立されている。 
表現型・病態:  VFは、3週令頃より全身性に上下動の振戦を示し、特に後躯の方が激しい。尾 を持ってぶら下げると、10日令頃より振戦が確認できる。この振戦は4~8週令頃 をピークに徐々に軽減する。被毛、触毛は正常で妊性がある。病理学的には、中脳被蓋、橋、延髄の神経網、小脳白質、および脊髄白質に空胞が認められる。電顕的には、ミエリン層板で囲まれた空胞、異常なミエリン塊、および oligodendrogria の変性壊死像が認められる。  
病因(原因遺伝子):  病因(原因遺伝子) 遺伝解析の結果、脳に空胞形成を起こす原因遺伝子は、常染色体性の単一劣性遺伝子により支配されており、第 8 染色体上の多型マーカーと強い連鎖がみられる。一方、振戦の発症には、上記の空胞形成を起こす遺伝子に加えて他の因子の関与が必要であると推測される。  
臨床への応用、有用性:  病理学的検索の結果より、新たなミエリン形成不全モデルとなる可能性がある。 
維持機関:  京都大学大学院医学研究科附属動物実験施設 (2002年12月現在) 
文献:  Nakane, Y., Adachi, T., Voigt, B., Yamasaki, K., Kaji, S., Inui, T., Kitada, K. and Serikawa, T. A novel mutation vf causing abnormal vacuoles in the central nervous system maps on rat chromosome 8. Exp Anim, 51(2): 149-155, 2002.  
執筆者記録:  中根良文(京都大学)2001年4月19日, TS:4/30/03 
close window to return to the search page.