ODUS/Odu
執筆者:篠原光子(大阪歯科大学・薬理学講座)
1.キーワード
自然発症歯肉炎ラット
2.由来
京都大学医学部実験動物センターより分与をうけたWistar-Kyoto系の中に、歯垢形成および歯肉炎を発症するラットを、1972年大阪歯科大学薬理学講座の井藤信義、東 幸雄、篠原光子、森政和により発見し、以後繁殖維持して近交系として確立した。現在73代目に至っている。
3.表現型・病態
生後5週令から、何ら人為的な処置あるいは方法を構ずることなく、市販の粉末飼料(飼育用飼料M粉末:オリエンタル酵母社製)と水のみを自由に与えることにより、下顎前歯唇側歯頚部に著明な歯垢形成と歯周ポケットおよび歯肉炎を発症するラットをODUS/Oduと命名した。一方、自然発症歯肉炎ラットと同腹より出発し、同様の飼育方法で歯垢形成も歯肉炎も見られないラットをPlaque-resistant
ラット(Res)と命名して系統維持している。
4.病因(原因遺伝子)
両系統について遺伝的モニタリングにおいて生化学的遺伝子座と免疫学的遺伝子座を調べた結果、生化学的遺伝子座の17項目(Akp-1,
Alp-1, Amy-1, Es-1, Es-2, Es-3, Es-4, Es-6,Es-7, Es-8, Es-9, Es-10,
Es-14, Gc-1, Hbb, Mup-1,
Svp-1)において両者間には、全く差異は認められなかった。しかし、免疫学的遺伝子座は、遺伝子座名
RT1・A および RT2
について調べた結果、赤血球膜表面の抗原がRT1・AにおいてODUS/Oduでkを示すのに対しResではlを、またRT2
についてODUS/Oduでbを示すのに対しResではaを示す。
5.臨床応用への応用、有用性
歯垢によって起因する歯肉炎の発症機序を局所的および全身的な面から解明を進め、歯周病の治療と予防法を確立したい。
6.維持機関
大阪歯科大学・薬理学講座
7.文献
Shinohara M et al.
A new strain with naturally occurring
gingivitis, "ODUS/Odu".
Rat News Letter 24, 4-6,
1991.
Shinohara M et al.
Leukocyte function of
streptozotocin-induced diabetes in naturally occurring gingivitis
rat.
Laboratory Animal Science 23,
375-378, 1996.