リコンビナント近交系とは

親系統(P)である2つの近交系(LEXF/FXLE RI系統ではLE/StmとF344/Stm)を交配すると、F1交雑仔が得られます。すべてのF1個体はLE/StmとF344/Stmの遺伝子をヘテロに保有し、遺伝学的に均一です。次に、F1個体同士の交配でF2交雑仔を作製します。この世代は、LE/StmおよびF344/Stm由来のアレルが入り混じるため、F2個体同士は遺伝学的に均一ではありません。個体により、一部はLE/Stmアレルが、別の部分はF344/Stmアレルがホモに固定されています。その他の部分はLE/StmおよびF344/Stmアレルをヘテロに保有しています。このF2世代からランダムに雌雄ペアを選び、そこから20世代以上兄妹交配を繰り返して新たな近交系を作出します。このような手法で作出された近交系をリコンビナント近交系(RI系統)と言います。

LEXF/FXLE RI系統の親2系統を写真に示します。
LE/Stmはシカゴ大学癌研究Ben May研究所のロングエバンスラットクローズドコロニーに、F344/Stmは日本チャールズリバーのF344/DuCrjに由来します。

F344/Stm LE/Stm


LEXF/FXLEリコンビナント近交系は、埼玉がんセンターの志佐先生らにより作製されました。それぞれ、50代以上(LEXF:LE/Stm ♀×F344/Stm ♂)および23代以上(FXLE:F344/Stm ♀×LE/Stm ♂)の兄妹交配が行われました。いくつかのRI系統は、毛色を固定するために兄妹交配を7~11世代繰り返した後、サブラインとして作製されました。これらサブラインの系統名はアルファベットにより区別されています(例:LEXF8D)。

一般的にRI系統は多因子疾患などの原因となる量的形質遺伝子座位(QTL:Quantitative Trait Loci)の解析に有用です。それぞれのRI系統はすでに近交化されているため、一度全染色体の遺伝子型を決定すると、あらゆる表現型の解析に利用することができます。すなわち、研究者はRI系統において自分の興味ある特性(表現型)を解析するだけで、すでに決定された遺伝情報との関連を調べることができます。また、それぞれのRI系統においては複数の同じ遺伝子を持つ個体を使用できるため、個体、環境、測定によるばらつきを減らすことができます。これは、F2や戻し交配による解析では不可能です。

このLEXF/FXLE RI系統について、NBRP-Ratフェノームプロジェクトの中で74の量的形質が調べられ、さらに357個のSSLPマーカーと5,779個のSNPマーカーによるStrain Distribution Pattern (SDP)が作成されました。これらのマーカーセットとフェノームプロジェクトにより得られた特性により、250以上の有意なQTLが検出されました。検出されたQTLについては、このウェブサイトから利用可能です。 Table 1 (Physiological Genomics, 32(3): 335-342, 2008), Table 2(Nature Genetics, 2008)

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