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 京都大学大学院医学研究科
 附属動物実験施設
京都大学 動物実験施設外観
    Institute of Laboratory Animals
    Graduate School of Medicine, Kyoto University
    

京都大学医学部附属動物実験施設報 第1号

発刊にあたって


京都大学医学部附属動物実験施設
施設長 芹 川 忠 夫


 京都大学医学部附属動物実験施設は、昭和47年5月1日に設置され、昭和49年6月30日に竣工された。開所式が行われた昭和49年11月から数えると、ちょうど20年を経過したことになる。その間、藤原元典名誉教授(任期:昭和47年度〜昭和53年度、衛生学教室、平成6年3月ご逝去)、高折修二名誉教授(昭和54年度〜昭和62年度、薬理学教室)、山田淳三名誉教授(昭和63年度〜平成4年度、附属動物実験施設)、日合 弘教授(平成5年度、病理学教室)の4名の歴代施設長の下に運営がなされてきた。現在は、教官2名、教務技官1名、文部技官7名(行 I:4名、行 II:3名)、その他に藤原財団流動研究補佐員1名、アルバイト4名、及び業務委託(空気調和機等の運転・保守、ケージ等の洗浄・滅菌)の派遣員で実務が行われている。動物実験施設の設立目的の一 つは、京都大学医学部(基礎・臨床)における動物実験の中央施設を作ることによって、実験用動物の飼育ならびに動物実験環境を向上させることにあった。本医学部の実験研究活動は非常に活発で、動物実験施設を利用したすぐれた研究成果が数多く挙げられ、その成果は、国内外の関連学会や学術論文等に発表されてきた。実験動物の飼育管理では、動物の給餌・給水、ケージ等の洗浄・滅菌や清掃ばかりでなく、実験用動物の搬入前の検査・検疫、マウス・ラットについては定期的に検査用の動物を用いた飼育室の微生物モニタリングが行われている。実験室や手術室のスペースが充分でないことから、すべての研究希 望に対応できたわけではないが、動物飼育室の利用率は高く、ほぼ当初の目的は達成されていると評価できよう。
 動物実験施設は、当初から定員と運営経費の不足問題を抱えてきたことを指摘しておかなければならない。アルバイトを雇用することや一部の業務を外部業者に委託する一方、高額となる空気調和機の運転経費を削減するため、高性能の空気調和機がありながら湿度制御は最低限にとどめるなどの処置を講じて運営してきた。それでも不足となる経費は、各講座等によって負担されてきた。約 20 年を経過するうちにいくつかの新たな問題点が出てきた。その第1は、建物や設備に支障が目立ち、修理や更新を必要とするものが年々増加してきたこと。第2には、御存知のごとく動物実験に対する社会の関心が非常に高くなり動物実験に対する反対運動が表面化してきたこと。これに関連しては、投書の増加や兵庫県からの犬譲渡契約が平成5年度からは継続されなくなったという具体的な変化が現れた。第3には、遺伝子導入動物や山羊・羊・豚を用いる研究など研究目的が多様化して、これらの実験環境の整備が求められるようになってきたことがあげられる。また、昨年1月には、ハンタウイルス(腎症候性出血熱の原因ウイルス)によるラットコロニーの汚染という大きな問題が発生した。発症者がでることなく終熄させることができたが、研究者には多大な被害を与えることになった。
 京都大学医学部附属動物実験施設には、純系動物飼育室の機能が引き継がれている。これは、良質の実験用マウス・ラットを安価に学内に供給する目的で昭和32年に始められたものである。附属動物実験施設が誕生した頃には、良質の実験用マウス・ラットが市販されるようになっていたので、ヒト疾患モデル等の特殊系統の供給と開発維持を主に行うようになった。その際、これらの系統を安全に保存するためと SPF 動物を作出するために一部を無菌動物として維持繁殖してきた。
 現在の附属動物実験施設の機能には、これまで述べてきた附属動物実験施設という建物の管理・運営の他に、実験動物と動物実験に関する教育・研究がある。教育については、医学部2回生および理科系学生を対象にした「実験動物学」、大学院医学研究科における「実験動物学概説」、および医療短期大学部における「実験用動物学」の講義を行い、さらに大学院医学研究科の病理系科目に「実験動物学」を開講して大学院生および研究生の指導を行ってきた。主な研究テーマは、実験用ラットのゲノムマッピングと自然発症疾患モデル動物の遺伝解析研究である。
 加えて、昨今、遺伝子導入マウスや特殊近交系マウス・ラットの受精卵移植や子宮切除術による微生物学的な清浄化作業が求められることが多くなり、これを業務として受け入れるシステム作りを行っている。これは、附属動物実験施設が従来持っていた無菌動物の作出・維持技術を応用したもので、受精卵での系統保存と共に新たな研究動向に対応したものである。今後は、遺伝子導入動物の作出サービスについても検討することになろう。
 京都大学医学部附属動物実験施設では、設置後から数えて5年目と15年目にそれぞれ記念講演会をおこない、それまでの成果と今後について総括してきた。この動物実験施設報の発刊を契機として、25周年に向けて今後どのようにこの動物実験施設を整備、発展させてゆくべきかを検討して行きたい。ついては、関係各位の変わらぬご支援とご協力をお願いする次第である。

(平成6年12月記)


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